日本は、明治期の近代化に伴い西洋由来の写実表現を本格的に受容しました。一方で、鎌倉時代の仏像や江戸期の自在置物などに見られるように、そもそも日本には固有の写実表現があり、明治期以降は出自の異なる2つの「写実」が混在することとなりました。その結果、部分描写を重視する高橋由一の独自のリアリズム絵画が生まれ、彫刻では高村光雲や平櫛田中が伝統彫刻に西洋的な造形を加えた精緻な表現に挑みました。そして、この系譜は現代を生きる作家たちにも脈々と受け継がれています。
本展では、これらの写実表現がどのように継承・再考されてきたのか、高橋由一の油彩画や松本喜三郎らの生人形を導入として、現代作家17名の絵画・彫刻作品から探ります。
西洋の写実表現を本格的に受容した明治期。江戸期の自在置物などに見られるような日本固有の「写実」を既に獲得していた日本人は、西洋由来の技術や感性をどのように獲得していったのでしょうか。本展ではその過渡期を生きた高橋由一や松本喜三郎らを展覧会の導入として紹介します。
出品作家:松本喜三郎、安本亀八、室江吉兵衛、室江宗智、高村光雲、関義平、須賀松園(初代)、平櫛田中、高橋由一
「彫刻」という言葉は明治期に翻訳として誕生したもので、もともと日本にはない概念でした。生人形に関心を寄せて松本喜三郎の下絵をもとにその再現を試みた小谷元彦、異素材の質感を漆芸で再現し見立ての妙味を追求する若宮隆志、枯れゆく自然物に命の時間を見ようとする七搦綾乃など、現代で「彫刻」に挑む作家たちが、松本喜三郎や高村光雲などから何を受け継ぎ、どのように作品へと昇華しているのか探ります。
出品作家:佐藤洋二、前原冬樹、若宮隆志、小谷元彦、橋本雅也、満田晴穂、中谷ミチコ、本郷真也、上原浩子、七搦綾乃
高橋由一は、遠近法をはじめとする科学的で普遍的な技法を熱心に学ぶ一方で「絵事ハ精神ノ為ス業ナリ」と絵画における精神性を重視しました。長い時間をかけて制作を行い、対象の変化と自身の実感をカンヴァスへ写す水野暁、無機質な物体をデジタル上で解体・再構成し有機的なイメージを作り上げる牧田愛、身の回りにあるものを「絵画」にすることで元々与えられている意味や用途から解放する横山奈美など、自身の精神性を表現する手段として写実を選んだ作家たちを紹介します。
出品作家:本田健、深堀隆介、水野暁、安藤正子、秋山泉、牧田愛、横山奈美
個人 | 団体 | |
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一般 | 1,000円 | 800円 |
シニア | 700円 | 500円 |
大学生 | 500円 | 300円 |
高校生以下 | 無料 | 無料 |
前売り (Pコード686-199/Lコード86701) | 600円 |