髙島野十郎(1890-1975)は、福岡県久留米市に生まれ、東京帝国大学農学部水産学科を卒業後、念願だった画家への道を選びました。その孤独と旅を愛した生涯と、徹底的な写実による独自の絵画は、没後に光があてられ、今日では幅広い人気を得ています。
生誕130年を記念して開催する本展は、野十郎の生まれ故郷である久留米では、2011年に石橋美術館で開催され大きな反響があった「髙島野十郎 里帰り展」以来10年ぶりの、待望の回顧展となります。代表作を含む野十郎の豊富なコレクションを誇る福岡県立美術館の所蔵作品を中心に、近年の新発見の作品もあわせた総数115点により、いまだ多くの謎に包まれた野十郎の絵画世界の魅力をご紹介します。
野十郎の仏教的な世界への関心は、10代の作品にすでに表れており、その後30代までの作品に特徴的な、暗い色調とうねるような形態には、同時代の岸田劉生ら草土社の画家たちの影響を見ることができます。青年期には謎めいた雰囲気の自画像を数点描いています。
1930年、40歳になる直前に渡欧した野十郎は、パリを拠点に美術館や教会を見て回り、写生に励む日々を過ごしました。滞欧中の作品には、それまでの緻密な描写とは異なる素早い伸びやかな筆遣いが見られ、初めて見る西洋の風景を前にした野十郎の感動が率直に表れています。
帰国後久留米の生家に戻った野十郎は、庭の一角に小さなアトリエを建て、制作に打ち込みました。1936年頃に再び上京し青山に居を構えてからは、2年ごとに個展を開催するなど充実した東京時代を過ごします。終戦直前には、姉がいた福岡県八女市へ一時疎開もしますが、この戦前期には密度の濃い風景画や静物画を多数手がけています。
4章では、戦後から1975(昭和50)年に亡くなるまでの30年間に描かれた作品を紹介します。70代に入った野十郎は静かな環境を求めて千葉県柏市に移り、全国へ写生の旅に出かけました。戦後期の作品には、対象の細部まで緻密に描きながら構図にゆるぎない安定感がある、野十郎の写実のスタイルの完成を見ることができます。
蠟燭や月、太陽をテーマとした連作は、野十郎の画業を最も特徴づけるものです。仏教などに裏付けられた独自の思想が、光と闇という対極にある現象の追求へ導いたのでしょう。野十郎が描いた様々な光は、見る者の心の内まで照らし出すかのような静かな力に満ちています。
個人 | 団体 | |
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一般 | 1,000円 | 800円 |
シニア | 700円 | 500円 |
大学生 | 500円 | 300円 |
高校生以下 | 無料 | 無料 |
前売り (Pコード685-259/Lコード86700) | 600円 |