岐阜に生まれた熊谷守一(1880-1977)。子どもの頃から絵を描くことが好きだった守一は、東京美術学校(現 東京藝術大学)に入学し、黒田清輝らに指導を受けながら、同級生の青木繁とも親交を結びました。
97歳まで続く長い画業の中で、身近な動植物や風景を描き続けながら守一の画面はゆるやかに変貌を遂げます。70歳を過ぎて、簡潔な色彩とはっきりした輪郭線による「モリカズ様式」と呼ばれるスタイルを確立してからも、その生涯を終えるまで、年を追う毎に形態や構図は洗練されていきました。
本展では、油彩画を中心に、書や日本画、素描も含めた約150点の作品によって、初期から晩年まで守一の画業の全貌をたどるとともに、花や虫などの愛らしい作品に注目して、小さないのちをみつめる画家の眼差しとその造形性に迫ります。
花に舞う蝶や地面を歩き回る蟻など、単純化されながらもそれぞれの特徴を強調して描き出されるいきものたちの姿は、今にも動き出しそうに見えてきます。虫や草花などが自然のままに生きる姿を見つめ続けた守一。時として実寸以上に描き出されるいきものたちの姿は、守一との距離の近さを物語っています。作品の裏側にある守一のまなざしを想像しながら、彼の観察眼が捉えた小さな“いのち”の一瞬の動きにご注目ください。
陰影をつけず平坦に塗る「モリカズ様式」で描いているにもかかわらず、守一の作品は不思議と奥行き感を感じさせる自然な空間表現を獲得しています。これは、守一が色彩と構図を熟考して描いていることの証です。また、筆跡もみどころです。守一の作品は、一方向に揃えた筆触で淡々と描かれているようにも見えますが、細部までよく見てみると部分ごとに描き分けていることがわかります。入念に計算されて描かれた画面全体を隅々までお楽しみください。
守一の作品を年代順に見ていくと、画風がゆるやかに変化しているということに気がつきます。たとえば、赤い輪郭線が登場した1930年代から、「モリカズ様式」完成の1950年代までは、およそ20年間の歳月が流れています。その間、次第に輪郭線は塗り残されるようになり、もののかたちが一つの色面で描かれるようになっていきます。東京美術学校時代から最晩年まで、常に新たなことに挑戦し続けた画家、熊谷守一のゆるやかな変貌をご紹介します。
個人 | 団体 | |
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一般 | 1,000円 | 800円 |
シニア | 700円 | 500円 |
大学生 | 500円 | 300円 |
高校生以下 | 無料 | 無料 |
前売り (Pコード769-563/Lコード86695) | 600円 |