日本では「タータン・チェック」として広く親しまれているタータン。その普遍的なデザインはマフラーやスカートなどの衣装からインテリアや小物まで日常のあらゆるところで目にすることができます。
タータンの起源は中央ヨーロッパに住んでいたとされるケルト人にまでさかのぼります。スコットランドの北西部、ハイランド地方に定住したケルト人は、タータンと呼ばれる織物を日常着としていました。そこからタータンは英国の中で特異な運命をたどり、18世紀にはハイランドの男性に対して着用が禁止されます。しかしハイランド文化復興の動きによって数十年後にその禁令が解かれると、スコットランドないしは英国を象徴する文化として再び脚光を浴びるようになりました。
本展では、一般にはあまりなじみのない様々なタータン生地約100種により、その多彩で洗練されたデザインをお楽しみいただきます。また19世紀にエディンバラで活躍した風刺画家ジョン・ケイの版画、現在活躍中のファッションデザイナーによる衣装、タータンと日本の関わりを示す資料など総数約270点を通じて、その歴史や社会的、文化的背景をご紹介し、様々な視点からタータンが持つ意味や魅力をさぐります。
「タータン」は、正確には、二つ以上の色を使い、縦・横の配列が同じ格子柄を指します。古代ケルト人の衣装が起源といわれ、今では用途や目的によっていくつかの種類に分けられています。氏族や家系を象徴する「クラン・タータン」や、王室に用いられた「ロイヤル・タータン」、特定の地域に結びつく「ディストリクト・タータン」など。さらに一つ一つの柄にも名前が付けられており、気品ある赤と緑の格子の「ロイヤル・ステュワート」は、世界中で最も知られているタータンの一つです。
19世紀にスコットランドの都市エディンバラで活躍した風刺画家、ジョン・ケイは、タータンのキルト(スカート状の衣装)を身にまとったハイランド兵士の肖像を残しています。また、同じ頃に描かれた作者不明の絵にも、キルトを身につけて踊る猫が描かれています。さらに20世紀になると、フランスで刊行されたモード雑誌に、タータン柄のドレスをまとった女性が登場しています。軍服として、スコットランド文化の象徴として、あるいは当時流行のファッションデザインとして、タータンが様々に描かれてきたことが分かります。
1865年頃に作られた腰回りがふんわりと膨らんでいる《アフタヌーンドレス》は、タータンが19世紀中頃の英国の貴族社会にも浸透していたことを示すものです。緑を基調としたシルクの生地に、赤と黄色のラインがアクセントとなっており、当時の女性たちの華やかな姿が想像されます。
近代に入ると、世界の著名なデザイナーたちがタータンを取り上げ、その新たな魅力を発信しています。会場には、現在スコットランドで活躍中のデザイナーによるドレスや洋服も並びます。民俗衣装だったタータンが、現代のファッションへと受け継がれ、進化していく過程は、タータンのデザインが持つ普遍的な力を示しています。
個人 | 団体 | |
---|---|---|
一般 | 1,000円 | 800円 |
シニア | 700円 | 500円 |
大学生 | 500円 | 300円 |
高校生以下 | 無料 | 無料 |
前売り (Pコード769-562/Lコード86694) | 600円 |