「リコウ」の愛称でも親しまれている長谷川利行(1891-1940、はせかわ としゆき)は、30歳頃に上京して画家を志すと、1936年に二科展で樗牛賞を受賞するなど、一気に画家としての才能を開花させました。しかし、生来の放浪癖から次第に生活は破綻していきます。1940年に三河島の路上で倒れ、板橋の養老院に収容、同年の内に知友の誰にも看取られることなく49歳の生涯を閉じました。
震災から復興する東京に暮らし、遊園地やプールといったモダンな建築物、カフェの女給や子どもなど市井の人を、素早く力強いタッチで描いた利行。約20年ぶりの大回顧展となる本展では、新発見の大作《白い背景の人物》や、隅田川公園に建設されたプールを題材とした《水泳場》といった、油彩画のほか、水彩画やガラス絵など約140点の作品によって、長谷川利行の全貌に迫ります。
今回の展覧会準備の段階で新しく発見された《白い背景の人物》をはじめ、2006年に見つかった《水泳場》、2009年に人気テレビ番組に出品されて話題となった《カフェ・パウリスタ》。近年発見された利行の大作を紹介します。
関東大震災で被災した利行は、一時的に郷里の京都へと戻りますが、ふたたび東京に戻ると二科展や1930年協会展で頭角を現します。そこで出品した《汽罐車庫》や《夏の遊園地》といった作品からは、震災から復興して近代化が進む街中と、工業都市としての一面を持つ当時の東京の姿が伝わってきます。また、街を往来する群衆の描き方にも注目してみましょう。《新宿風景》に描かれる群衆は、個々の判別が容易でなく、ただその場の喧噪や空気感を抽出して描き出したかのようです。
利行は、昭和初期の東京の風景を描いただけでなく、優れた肖像画も多く残しています。《岸田国士像》など、著名人をモデルとした作品もありますが、今でこそ画家として名が残る靉光の若かりし頃を描いた《靉光像》のほか、ハーゲンベック・サーカス団の関係者と思われる《ハーゲンベックの少女》やカフェの女給である《ノアノアの少女》など、東京に暮らす名もなき少女や芸人たちを描き続けました。
個人 | 団体 | |
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一般 | 1,000円 | 800円 |
シニア | 700円 | 500円 |
大学生 | 500円 | 300円 |
高校生以下 | 無料 | 無料 |
前売り (Pコード768-895/Lコード86684) | 600円 |