生涯を通じて、描きたい自然を求め、ひたすらに山野を訪ね歩いた吉田博(1876-1950)。仲間たちから「絵の鬼」と呼ばれるほど絵の修業に邁進し、その画家としての姿勢には常に、一切の妥協を許さないチャレンジ精神と、自然への真摯なまなざしがありました。
生誕140年を記念して開催するこの展覧会では、湿潤な日本の風景をみずみずしい感性で描いた水彩画や、雄大な高山美をとらえた油彩画、伝統的な技術に洋画の表現を融合した清新な木版画など、代表作を含む約230点の作品によって吉田博の画業の全貌を紹介します。出身地・久留米では初となる大回顧展です。
吉田は、自然が見せる一瞬の美をとらえようと、水彩、油彩、木版と制作方法を変えながら国内外の風景を描き続けました。画家修業のはじめに専心した水彩画には、朝霧や川霧など湿潤な大気の状態が情趣豊かに表現されており、自ら山に登って獲得した高みから遠くを眺める視界は、雄大な山岳風景の油彩画の傑作を生み出しました。そして49歳から本格的に始めた木版画では、洋画の表現を基本とした造形の上に、それまでの伝統的な浮世絵にはない、繊細な光の輝きや柔らかな色のグラデーションが加えられ、吉田独自の世界が示されています。
23歳の時に片道切符でアメリカへ渡って成功を収め、さらにヨーロッパを巡って帰国した吉田は、以後も度々外遊を重ねました。当時の画家としては稀なその行動には、自らの絵画の可能性を求めて果敢に海外へ飛び出すチャレンジ精神と、まだ見ぬ景色への飽くなき探究心があったことがうかがえます。アメリカやヨーロッパ、中国、韓国、インドなど世界各国を訪ねたことで画題の幅は広がり、表現もまた、その土地ならではの日差しや温度まで画面に取り込んで、さらなる深化を見せていきます。
吉田には珍しい人物画の大作《精華》や、ユーモラスな味わいを見せる水墨画、従軍画家としての作品など、これまであまり紹介されていない作品も展示します。また、吉田の作品は早くから国外で高く評価され、イギリスの故ダイアナ妃は自らの執務室に吉田の木版画《瀬戸内海集 光る海》を飾っていました。これらの作品は、様々な制作方法を経て自らの絵の道を切り拓いていった吉田の姿を伝えてくれます。
個人 | 団体 | |
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一般 | 1,000円 | 800円 |
シニア(65歳以上) | 700円 | 500円 |
大高生 | 500円 | 400円 |
中学生以下 | 無料 | |
前売り (Pコード767-908/Lコード85058) | 600円 |